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時空螺捻体とは

どこまでも広がる星空。観測限界を超えたその果ては、有と無の境界である。時間も空間も存在しない真の「無」とは、物理的に特定される事柄ではなく、概念の中にある。それは科学的には意味をなさない。

しかし、存在する宇宙の外側が概念の世界であるからこそ、それは私たちの意識の奥底にあるとも言える。思考や意識の可能性には果てが無く、あらゆる実も虚も、そこには存在しえる。

宇宙の外側と意識の深みが等価なものだとしたら、科学的意味がなかったとしても、人の世界観は大きく変わるはずである。

時空螺捻体は、私自身を構成する記憶や記録をたどりながら、心の核にある形体を手探りすることで、宇宙全体の在り方を推論するプロセスである。

素材との対話

金属材料学は、金属材料の機能的な可能性を追求しながら、膨大な知見を積み上げて来た。強く、軽く、錆びず、さらには電気的特性や触媒作用など、現代文明の発展を根底から支えているのは、金属素材を巧みに活用する知識と技術であると言えるだろう。

しかしながら、美の追求という感性に作用する側面からの研究は、甚だ希薄である。特に、レアメタルと呼ばれる新しく使われるようになった金属は、取り扱いの難しさから、アートジャンルで使用されることは稀である。

しかし、タンタル、ニオブ、ジルコニウムなどの新金属が、美の世界を広げる可能性は極めて大きい。金、銀、銅や鉄などの伝統的な金属素材には無い、様々な特性をこれらの金属は持っている。

私は、時空螺捻体の制作を通して、金属素材が隠し持つ美の可能性を追求し、未知の荒野を開拓する。

拡散接合について

時空螺捻体を製作する上で、最もコアな技術が異種金属の拡散接合である。拡散接合は、各種の金属素材を融点以下の温度で、圧力を加えながら熱的に接合する技術である。

異なる金属素材が固体であるにもかかわらず、原子レベルで境界面を行き来しながら混じり合い、一体化する。温度、圧力、時間を制御することによって、拡散の深度は変わり、さらに冷却時の結晶化が多彩な表情を描く。

拡散接合による原子の移動と結晶化は、単に視覚的な効果だけではなく、ミクロな世界の物質の振る舞いが、世界全体の在り方と呼応している事実を象徴している。